22’星組『ザ・ジェントル・ライアー~英国的、紳士と淑女のゲーム 』2月21日ソワレの記録

昨年の2月21日は宙組アナスタシア千秋楽にして、わたしが生まれて初めて宝塚作品を観た日。そんな思い入れのある日に『ザ・ジェントル・ライアー~英国的、紳士と淑女のゲーム』を観に行って来ました。

しかも今回1階2列センブロという素晴らしいお席を用意していただき、友会ちゃんには頭が上がりません。永遠に君を愛す。

 

以下、あらすじと感想。ネタバレあり。

 

あらすじ

舞台は19世紀末ロンドン。父親であるキャヴァシャム卿(美稀千種)から結婚を急かされるも、夜な夜な遊び歩いてばかりのプレイボーイなアーサー(瀬央ゆりあ)は、友人のロバート・チルターン(綺城ひか理)の邸でかつての恋人・ローラ(紫りら)に再会する。

ローラが政治家であるロバートを訪ねて来たのは、過去の汚職の証拠を盾に、彼女の不正な株取引が有利になるよう議会で演説させるためだった。ロバートを理想の夫だと信じてやまない妻・ガートルード(小桜ほのか)を失望させたくない一心から、ロバートはアーサーに助けを求める。

 

印象的なシーンや感想
  • 幕が上がり開演アナウンスが流れる中、0番でソファに横たわる瀬央さんのシルエットが段々と浮かび上がって来る。アナウンスの爽やかなお声とは裏腹にシルエットから色気がダダ漏れ。この時点で相当しんどい。
  • 襟元がはだけた状態で登場したアーサー、なんと歌いながら綺麗に蝶ネクタイに結っていく。器用な男、いいよね…わかっていらっしゃる…と田渕先生に手を合わせる。
  • 身支度を整える中でカフスボタンを弄りながら流し目決めるところ、心の中で好き〜!って叫んじゃった。
  • 従者のフィプス(大輝真琴)がアーサーにブートニアを持っていくも、ブートニアのデザインが古臭いのが気になり「今度はもっとさりげないものを」「なるべく若く見えるように」と注文をつけるアーサー。ごもっともでございますを連呼するフィプスに思わず笑ってしまうシーンなのだけど、実はブートニアがキーアイテムであることがここで明示されていたことに終演後感服。
  • あとこれは本編と全く関係ないのですが、瀬央さんがステージで動く度にふわっといい香りがするんですよ…鼻で実在していると感じられるの幸せ過ぎる。

 

  • Twitterにも書いたのですが、チルターン卿邸の夜会冒頭で上手から2番目に登場するブラウンのタスキを掛けた男役の方を目で追ってしまったのですが、お名前が分からず…有識者の方ぜひ教えてください。
  • 今回登場する3人のヒロインのドレスカラーが、それぞれのイメージにぴったりだった。正義感が強く清廉潔白なガートルードはスカイブルー、いつもチャーミングな笑顔のメイベルはイエロー、愛を貪る毒蜘蛛のような女・ローラはダークレッド。衣装担当を確認したらやっぱり有村淳大先生でにっこり。
  • 初めて会ったメイベル(詩ちづる)を「チャーミングなお嬢様だ」と気に入ったキャバシャム卿。意中の相手の父親の好印象を勝ち取るメイベル、もしかして世渡り上手さん?
  • キャバシャム卿から34歳であることを口にされ「周りには29ってことで通してるんです!」と焦り、更にはガートルードに「あなたが本当は34歳ってところ」から聞かれていたことに落胆するアーサー。めちゃくちゃ顔は良いのに、人を操るどころか翻弄されっぱなしなアーサーが愛おしい。

 

  • 馬車の中でローラから手を握られ、冷たい目のままサッと振り払うアーサー。本作、にこにこな瀬央さんも素っ気ない瀬央さんも味わえる欲張りセットです。
  • ローラの見事な毒気の強い悪女っぷりに、紫りらさんが段々とヘレナ・ボナム=カーターに見えて来た。これで代役ってどういうこと…?演技が上手すぎる。

 

  • ゴーリング卿邸のガーデンパーティーでランタンが灯っていたり、アーサーもジプシーの格好をしたりと、彼の並々ならぬこだわりを感じる。流石は遊び人の独身貴族。
  • アーサーが取り巻きに囲まれ困っているところに、ダンスをしながら表れ助け舟を出すフィプスが有能。
  • 最初はメイベルに対して「お子様はベッドにいる時間だ」と子ども扱いをしていたのに、「私があなたを躾けてあげられたら良かったのに」と言われてあからさまにメイベルを意識し始めるアーサー。
  • メイベルのこの発言と、アーサーの父親は登場しても母親は名前すら出てこない点から、実はアーサーは幼い頃に母を亡くしており愛情というものに疎いのでは…ということろまで考えた。原作未読なので斜め上の考察だったらごめんなさい。
  • このあとオペラに誘って来たアーサーに対し「レディを待たせちゃダメよ」「どんな理由があっても」とメイベルが返すのだけど、これフラグだ…絶対間に合わないやつだ…と震えた。

 

  • 婦人自由連盟の集会のナンバー、これぞミュージカル!なナンバーでとっても好き。そしてガートルードの歌声にうっとり。
  • ロバートに俺がどうにかすると大見得を切ったにも関わらず、ガートルードを説得するどころかロバートに後ろめたい過去があるとバラしてしまうアーサー。うっかりさんにも程がある。
  • あとレディー・マークビー(水乃ゆり)の空気の読めなさ加減については、水乃ゆりさんのお顔だからギリギリ許されている節がある。

 

  • 息を切らしてオペラハウスに向かうアーサーの王道少女漫画感が堪らない…!
  • 第1幕最後のナンバー、めちゃくちゃ良かった…瀬央さんの真っ直ぐな歌声と歌詞が合っていて思わず鳥肌が立った。
  • あとメイベルがピンクの外套を着て現れるのだけど、お人形みたいに可愛くて腰を抜かした。

 

  • 第2幕冒頭、トミーがメイベルにプロポーズして去っていったところで、メイベルとアーサーがバッタリ遭遇するベタ展開に、「これでええ…!」と心のノブが大絶賛。
  • 昨夜のことを謝罪するアーサーをすぐに許した上に、欠点すら愛おしいと思えるメイベルの愛の深さたるや。尊敬しちゃう。
  • そんなメイベルにガートルードを愛していたことをわざわざ告白するアーサー、全自動地雷踏み抜きマシーンで笑ってしまう。

 

  • ボーリング卿邸にて、「これから訪ねて来るご婦人を客間で待たせるように」とアーサーがフィプスに言いつけたところで、ああ〜これ絶対取り違えるな…と思っていたら案の定で笑った。
  • アーサーから褒められ、跳ねて喜ぶフィプスが完全にヲタクの反応で可愛い。
  • ローラから例の手紙は「このドレスの奥に、あなたの手で探してみる?」と言われ、一瞬ローラの胸元に手をやるアーサーの手つきにエッッッ!!!と目をひん剥いてしまった。色気がすんごい。
  • アーサーは作中ずっと自分を嘘つきでと言うけど、メイベルの言う通りかれの嘘は自分を守るためではなく、誰かを笑顔にするための嘘なんだよなぁ。

 

  • チルターン卿邸にて、父親からお前の美点なんてひとつも思いつかない
  • ガートルードがアーサーに宛てた手紙を読んで、ふたりの仲を疑うなんてあり得ないと大笑いしながら身体を大きくのけぞったロバートが「逆C」になるの面白過ぎた。常人があれを真似したら間違いなく腰を壊す。
  • ローラに真の友情と愛情を見せつけ≪切り札≫を手に入れたところ、完全にスカッとジャパン in ロンドンだった。
  • ただ、ローラがアーサーをウィーンに来ないか誘うところで、アーサーに対して歪んではいるけど彼女なりの愛情を持ち合わせていたんだな…と少しだけ切ない気持ちになった。
  • メイベルを訪ねて来たトミーがメイベルの元へ走って行くところで、「彼、跳んだ…?」「ええ、跳んだわ…」とキョトンとしてるアーサーとガートルードが可愛い。
  • 「愛は弱い者のためにあるもの」「欠点のない完璧な人間なんてどこにもいない」と名言連発のアーサー。
  • トミーがワーッと泣きながら階段を駆け上がって行く際に踊り場で一度躓く演技が上手すぎて、最初は本当に躓いたのかと思っていた。(配信を観て演技だと知る)

 

  • メイベルに本心を話すところで、真っ先に「本当は……34歳なんだ!」と叫んで会場がズコーーーとなる感じ、とても良い。
  • アーサーが「どうも調子が出ないな…」と人様の花瓶から勝手に真っ赤な薔薇を拝借して胸元に刺すやんちゃが過ぎる。それにしても薔薇のブートニアが似合い過ぎてて頭の中でリーンゴーンと教会の鐘が鳴った。
  • アーサーのプロポーズに対し、メイベルの「わたしがあなたに夢中だってことは、ロンドン中のみんなが知ってる!あなたが34歳だったことも!」が可愛過ぎた。そしてアーサーがサバを読んでることを承知の上で彼を愛するメイベル、器がデカ過ぎないか…。
  • この後のアーサーとメイベルのダンスシーンで、「今ディズニー映画観てるんだっけ…?」となった。とにかく絵になるふたり。
  • ラスト、メイベルの肩越しにアーサーが客席に向かってバチッとウインクを決めた瞬間、ブラボー!と立ち上がりたい気持ちでいっぱいになった。ありがとう、ありがとう…。

 

  • ダンディなロバートも素敵だったのだけど、フィナーレでお髭を取って登場した綺城ひか理さんがあまりにイケメンで腰を抜かした。
  • そして瀬央さん、さっきまで深緑のお衣装が最高に似合う!と思っていたらミントグリーンのお衣装もめちゃくちゃ似合う…やはり美人を前にパーソナルカラーの概念は通用しないのだなと痛感。
  • あとラストのデュエダンで、3人の娘役が代わる出て来るのも、アーサーの生涯を表していて良かったよね。
  • そしてこのデュエダンの最中に瀬央さんとがっつり目が合い、そのまま吸い込まれてしまうかと思いました…顔が良過ぎる…。
  • この日、詩ちづるちゃんがリフトの際にドレスを捌きしれなかったのか瀬央さんの腕に乗り損なってしまったのだけど、瀬央さんが(おいで)と言うようにキラッキラの笑顔を向けて、ちづるちゃんが笑顔でピョンと跳び乗ったのが可愛すぎた。アクシデントもある種のご褒美なよなぁとしみじみ。でも怪我にだけは気を付けてね。
  • あとカーテンコールの瀬央さんが終始にっこにこで、客席の全員と目を合わせるぞ!!という気合いを感じた。愛が深い…。

 

おまけ:曜日に関する考察
  • 社交シーズン中、トミーがメイベルにプロポーズをするのは火曜日と木曜日。チルターン卿邸の夜会でもプロポーズをしようとしていたことから、物語は火曜日から始まったことがわかる。
  • 火曜日の晩、ゴーリング卿邸でアーサーはメイベルをオペラに誘う。
  • 翌日、アーサーがチルターン卿邸の書斎を慌てて飛び出したのが夜7時。彼がオペラハウスに着いた頃にはもう序曲が始まってしまっていたことから、メイベルと約束していたオペラは水曜日夜7時開演の作品だった。
  • キャヴァシャム卿がゴーリング卿邸を訪ねて来た際、「シーズンの間、僕が真面目な話が出来るのは水曜日だけ」「医者から7時以降真面目な話をするのは止められておりまして」と話すことから、このやりとりは木曜日の夜7時以降の出来事。
  • 以上から、アーサーがメイベルを水曜日のオペラに誘っているのは、メイベルを真面目に愛していることの表れだと取れる。
  • 運命の下院議会は木曜日の夜。夜7時以降にロバートはゴーリング卿邸を訪れていることから、議会はそれ以降の時間で開かれた模様。政治家って大変ですね…。
  • チルターン卿邸でのトミーの失恋、そしてアーサーのプロポーズは金曜日。つまり本作はたった4日間の物語。
  • ちなみに、社交シーズンがいつなのか調べたところ概ね12月〜8月だそう。第2幕冒頭のナンバーから舞台はシーズン終わりのようなので、メイベルはトミーから実に72回もプロポーズをされた様子。そりゃうんざりしちゃうわ。

 

おわりに

今年の宝塚初めは花組さんの予定だったのですがそれが叶わなくなり、以降も休演続きでだいぶ落ち込んでいたのですが、今作で元気を貰えました。

客席でドッカンドッカン笑いが起きるのにどこまでも上品で、これぞ宝塚!これぞミュージカル・コメディ!な作品と出逢えて嬉しかったです。

宝塚、大好きだ〜〜〜!!!