'21宙組『夢千鳥』5月8日ディレイ配信の記録

緊急事態宣言の発出で、たった4日間だけの上演となってしまった夢千鳥。

和希そらがトップスターになった日には、あのバウ公演は素晴らしかった…!とヲタクが嬉々として語る姿が目に浮かぶ作品だった。(頼むから円盤化してくれ~!)

素晴らしい作品を語り継がなければ・という気持ちで配信の感想や考察を書いていく。

 

あらすじ

昭和の映画監督・白澤優二郎(和希そら)が大正の竹久夢二の人生を描くうちに、白澤の中で自己と夢二の境界が曖昧になっていくお話。

徐々に時代の切り替わりがわかりにくくなっていく見事な演出と、一人二役の見事な演じ分けが段々と曖昧になっていく和希そらさんの演技力があって成り立つ作品だと感じた。

 

印象的なシーンと考察

夢二と鳥

今作では、物語の随所で鳥のモチーフが出てくる。他万喜(天彩峰里)が飼う小鳥、舞い散る座布団の羽根、彦乃(山吹ひばり)が読み聞かせるメーテルリンクの「青い鳥」、巨大な鳥籠を模した舞台装置。

夢二にとって「鳥」って何ぞや・と考えていたらこんな詩を見つけた。

あなたの心は 鳥のやう

涯のしれない 青空を ゆきてかへらぬ 鳥ならば

私の傍へ おくために 銀の小籠に 入れませう。

竹久夢二「青い小径」−あなたの心

これぞまさに籠の中の鳥。夢二にとって「鳥」とは愛する人の心の象徴だった。

あと、身近な幸せに満足できず理想を追い続けてしまうことを「青い鳥症候群」と言うそうだ。他万喜が傍にいながら、たくさんの女と恋をした夢二のためにあるような言葉だと思った。

 

赤い羽根と白い羽根

  • カッとなり他万喜に刃物を振りかざす夢二。咄嗟に座布団で身を守ると、中から赤い羽根が飛び散る。流血を赤い羽根で表現するのとっても良かった…)
  • それから、白澤の内縁の妻であり、彼の映画の中で他万喜を演じる赤羽礼奈(天彩峰里)に至っては、名前が「赤羽」な上に衣装も真っ赤。
  • 作中で夢二は彦乃に「僕の青い鳥は彦乃だね」と言うが、彦乃が夢二の元を去る時には白い羽根がひらりと舞い落ちた。心の底では彦乃のことも青い鳥だと思っていなかったと推察できる。
  • 前回『月雲の皇子』の考察でも色にまつわる話を書いたが、赤と白は対となる色であり、赤には血や暴力性、白には無垢や神聖性といった意味合いがある。他万喜には日常的に暴力を振るう一方、彦乃とは「ままごとのよう」と揶揄される生活を営んでいた夢二。正反対の関係性が羽根の色にも表れている。
  • ポスターにある黄色はお葉(水音志保)の象徴か。ただ、黄色は赤とも白とも対にならない色である。夢二にとってお葉は、他万喜や彦乃と同等の存在ではなかったのかな・とも思った。(お葉パートがあっさりしていたのも相まって)

 

愛とは何か?

最後のご挨拶で、和希そらさんが今作のテーマは「愛とは何か」だと仰っていた。今作を通じて考えたことを書いておく。

  • 人は、過去の成功体験によって自己肯定感が高まるという。そして幼少期に親から無償の愛を注がれることは、最初にして最強の成功体験だと言える。顔がいいとか、勉強ができるとか、社会の役に立つとかそんなこと関係なしに、ただ自分が生きているだけで喜んでくれる人がこの世に存在することを知っていることは何にも勝る。
  • 夢二はこの逆で、人生の基盤になる成功体験に乏しい。幼少期に所謂「毒親」の元で育ち、心の拠り所にしていた姉も嫁いでしまい、得てして自己肯定感が育まれないまま大人になってしまった。だから売れっ子画家になろうとも自分を亜流画家だと卑下し続けた。
  • 終盤、夢二への台詞に「自分を愛しておやりなさい」とある。前述に当てはめて考えるなら「自分、生きてて偉いな〜!」と心の底から思えるようになりなさい、ということになる。

つまり、愛とは自己や他者が生きていることを手放しに喜べることではないだろうか。だから本当は、他万喜も彦乃もお葉もみんな、夢二にとっての青い鳥だった。運命の人はずっとそこにいたのに、夢二は愛を知らなかったからそれに気付くことができなかったのではないだろうか。

 

その他、印象的なシーン

和希そらさんと天彩峰里さんの演技に圧倒された今作。最後に印象的なシーンを掻い摘んで。

  • 冒頭のソラカズキのアナウンス。普段は凛としたよく通る声なのに、敢えて陰のある少しくぐもった声で話すことで、これから始まる物語への期待感がグッと高まった。
  • 他万喜がまるで絵からそのまま出てきたように美しくてクラクラ。妖艶ってこの人のためにある言葉だなと。
  • 優二郎を取り巻く女優を使って映画を撮るよう話す社長に対して「提案があるって言いましたよね?」と言い返した優二郎の顔が最高。やってくれたなこのタヌキ爺め…と顔に書いてあった。顔が綺麗な人のイライラしてる顔って何故あんなにも刺さるのだろう。(ユーリーに想いを馳せながら)
  • 今作は敢えて舞台装置を最小限にすることで、大正と昭和のスイッチが段々と曖昧になっていく様子を見事に演出していた。バーでうたた寝したと思ったら時代が入れ替わっていたり。
  • 夢二と他万喜のDVタンゴ。夢二と他万喜の歪な関係性を語るに必要不可欠なDVシーンをタンゴにすることで、胸糞悪くなるどころか美しいワンシーンに昇華した演出は特に素晴らしかった。(他万喜を折檻することで創作意欲が湧く夢二には流石に引いた)(苦しむ他万喜を熱い目で見つめながら筆を進める和希夢二の演技は最高でした)
  • 彦乃と初めて話した夢二が「大きい声、出るねぇ」と優しく微笑む姿は、さっきまで他万喜をぶん殴って首を締めていたとは思えない爽やかさ。こんな顔された好きになっちゃうよね〜わかる〜!
  • 彦乃の親に、夢二と彦乃の結婚を直訴する他万喜の形相には鬼気迫るものがあった。他万喜の「もっと狂って、私に狂って」「どこへ逃げたって私の愛からは逃れられない」という狂気じみた台詞の説得力がここに詰まっていた。
  • 対照的に、真っ白なキャンバスのように純粋で穢れを知らない彦乃。恋に恋した夢二が彼女に惹かれてしまうのも納得。あとSplendidの曲がとっても可愛かったな。
  • 長崎まで病に伏せる彦乃を迎えに来た父親。あくまで絵の勉強に彦乃を出しただけというスタンスを貫く父親からは、ふたりの関係は家族ごっこでしかないことが伝わる。
  • 夢二がお葉に掛けた「清い気持ちで生きていれば過去はすっかり許される」という言葉は、他万喜や彦乃を心から愛せなかった自分への免罪符でもあるのかなと思った。
  • 最後、鳥籠を模した舞台装置の扉が開くが、これは束縛してきた鳥(女性たちの心)を解き放つとともに、自分自身をやっと赦してあげられたのかなと解釈しました。
  • フィナーレが豪華すぎてびっくりした。一本ものでこんなにボリュームがあるなんて!良いのですか!衣装も沢山で見応えがあった。ソラカズキのしなやかダンスと素晴らしい歌声が堪能できて合掌。
  • 人物像の丁寧な掘り下げ、緻密な演出に加えて、主演を一際輝かせるフィナーレ構成。今作でバウホールデビューって本当??と目を疑ってしまう見事な作品でした。栗田先生のショー作品が今から楽しみです。

 

最後に

確実に伝説に残るであろう今作を、ディレイ配信のおかげで観ることができて良かった~!と思う一方で、貴重なチケットを手にしていたのに劇場で観ることが叶わなかった方や、稽古に励んできた生徒さんのことを思うと胸が痛い。

一刻も早く、「明日は幕が上がらないかもしれない」という不安のない世の中に戻って欲しい。Life is in the theater. 

'13月組『月雲の皇子-衣通姫伝説より-』の記録

来る5月、遂に月組『桜嵐記』で初のムラ遠征が決定。

これはしっかりお勉強して臨まなければ…!ということで、作・演出をされる上田久美子先生のデビュー作にして、珠城りょうさん主演の『月雲の皇子』を鑑賞した。

観終わるや否や、例の月組贔屓の友人に長文で考察を送り付けるという大迷惑行為を行ったのだが、それでも気が済まなかったので以下に書き留めておく。

 

あらすじ

本作は古事記日本書紀に残る『衣通姫伝説』の行間を描いていた作品なのだが、そもそも古事記日本書紀では登場人物は同じでも物語の結末が異なる。

同母兄妹とされた木梨軽皇子衣通姫が禁忌である姦淫を犯したため、允恭天皇崩御した際に弟の穴穂皇子が即位するまでは同じ。

712年に編纂された古事記では、伊予の国(現在の愛媛)に木梨軽皇子が流刑された後、衣通姫木梨軽皇子に会いに行き2人で心中したとされる。

720年に編纂された日本書紀では、流刑されたのは衣通姫で、権力争いに敗れた木梨軽皇子はひとり自害したと綴られている。

2つの歴史書で相反する結末が描かれた物語を、矛盾することのない一つの物語に昇華したのがこの『月雲の皇子』という作品である。

 

印象的なシーンと考察

衣装の色や柄が示すものとは?

第二幕の衣装はポスターに使用されているものになるのだが、日本古来の4色であるで、登場人物が見事に表現されている。

  • :穴穂皇子(鳳月杏)。赤には血や暴力性といった意味もあることから、武術に長け、乱世を治める穴穂皇子のイメージそのもの。
  • 衣通姫(咲妃みゆ)。白は神聖性の象徴であることから、巫女として育てられ、土蜘蛛には「月の女神」とされた彼女にぴったりである。また、花嫁が着る白無垢には「無垢な状態で嫁ぎ、嫁いだお家に染まる」という意味があることから、穴穂皇子と夫婦となり5年が経過しても、心も身体も穴穂皇子のものになっていないことの表れとも取れる。
  • 木梨軽皇子(珠城りょう)。青は生命力が盛んなことを意味し、また中国から伝わった四神で「青龍」は東を司る意味がある。流刑先の伊予の国で土蜘蛛の頂点に立ち、東にある飛鳥の地を目指す木梨軽皇子と合致する。
  • :土蜘蛛。土蜘蛛の孤児である衣通姫は保護された際に煤だらけで真っ黒だったことや、蜘蛛の身体は黒いことから、本作においては土蜘蛛の象徴だとわかる。(因みに土蜘蛛とは天皇に従わない土豪の総称)

天皇側の穴穂皇子と衣通姫が赤・白、天皇に叛く木梨軽皇子と土蜘蛛が青・黒と対比になっているのだが、これは赤・白は天上界の色、青・黒は地上の色とされることに合致する。

 

また、衣通姫が一人伊予国に辿り着いた時には、菱型の柄の着物を纏っている。

  • 和柄にはそれぞれ意味があり、中でも菱文には「無病息災」や「子孫繁栄」の意味が込められている。
  • 伊予の国に無事辿り着き、木梨と真の夫婦となり幸せに暮らして欲しい…という願いを込めて、大中津姫(或いは衣通姫の侍女)が旅立つ衣通姫にこの着物を用意したと読み取れる。

穴穂皇子との結婚を止められなかったことを悔やみ、衣通姫の本当の幸せを心から祈り見送った大中津姫の優しさが垣間見えるシーンである。

 

タイトルの「月雲」とは?

第一幕で、木梨軽皇子衣通姫を一目見た蜘蛛族の少年・ティコに美しいものを知っているか問うと、「月蜘蛛(晴れた月夜を飛ぶ蜘蛛)」と答える。

  • 巫女として大切に育てられた衣通姫だが、実際は木梨軽皇子と穴穂皇子が幼き頃に保護した蜘蛛族の孤児である。
  • 第二幕では、木梨軽皇子は土蜘蛛の前で衣通姫を「月の女神」だと紹介する。(このことから、蜘蛛族にとって月は神聖なものであることもわかる)

以上から、「月蜘蛛」とは蜘蛛族の中でも美しく特別な存在である衣通姫の比喩だということがわかる。

 

また、「月蜘蛛」ではなく「月雲」と表記したのは理由は2通り考えられる。

  • 木梨軽皇子が初めて「月蜘蛛」という言葉を聞いた際、「月雲」と勘違いしたから。(木梨軽皇子衣通姫が蜘蛛族の子と知りながらも、美しい巫女として見ていたことの比喩とも取れる)
  • 「雲の上の存在」という慣用句からもわかるように、「雲」には地位や身分が高いという意味がある。天上人である「皇子」を装飾する言葉は、地を這う「蜘蛛」よりも天にある「雲」の方がふさわしいから。

 

木梨軽皇子と穴穂皇子の対比

衣装だけでなく、木梨軽皇子と穴穂皇子は作中で何度も対比されていたのでまとめてみた。

  • 歌に対する考え方。木梨軽皇子は後世に真実の物語を残したいとし、穴穂皇子は政のためには時に嘘を残すことが正しいとする。
  • どんな世に相応しいか。聡明で心優しい木梨軽皇子は平時、武術と戦略に長けた穴穂皇子は乱世を治めるのに向いているとされた。
  • 罪を犯した子どもへの対応。窃盗で捕らえられた蜘蛛族の少年・ティコを逃してあげようとする木梨軽皇子と、不穏分子は子どもであっても消すべきと殺める穴穂皇子。
  • 出自について。允恭天皇と大中津姫との間に生まれた木梨軽皇子と、渡来人の家臣・青と大中津姫との過ちによって生まれた穴穂皇子。
  • 嘘をつく動機。穴穂皇子は青が「衣通姫木梨軽皇子を誑かしている」と嘘をついた場面で、父の命を守り、かつ自分が即位するために同調する。木梨軽皇子は、「衣通姫がたぶらかしたのではない、自分が強いたのだ」と自分だけが傷つく嘘をつく。

 

優しかった木梨軽皇子はなぜ変わってしまった?

伊予の国に流刑されてからも暫くは土蜘蛛の民にも優しく接していた木梨軽皇子。いつしか土蜘蛛に自分を従わせ、武器を作らせるようになる。

これは、穴穂皇子と結婚してもなお心では木梨軽皇子を想っていると手紙に綴った衣通姫を信じられなくなり、歌を詠むことができなくなったから。

だが伊予の地で再会した衣通姫は「物語は偽りのためでなく、心に満ちた涙のためにある」と言う。この世には自分の力ではどうにもできないこともある、それでも心にある真実を伝えるために詠うのだと。

死の間際に木梨軽皇子が歌を詠み、「歌でしか言えぬ想いがある」と言う。ここで、衣通姫の気持ちが届いていた事がわかる。切なくも美しいラスト。

 

穴穂皇子はなぜ偽りの物語を残させた?

衣通姫は土蜘蛛を庇い海に落ち、木梨軽皇子は穴穂皇子と戦った末に殺されるが、穴穂皇子は「2人は月が美しい夜に一隻の小舟で海に出て、二度と帰ることはなかった」と残すよう家臣に指示する。

家臣から政のためにならない偽りを残す理由を問われ、「…わからん」と答えるが、自分の嘘が原因で不遇の死を遂げた2人への弔いだと考えられる。

また、木梨軽皇子の塚を作っては土蜘蛛の信仰の対象になるからと亡骸を海に流すよう指示したのも建前で、海に落ちた衣通姫木梨軽皇子が同じ場所で眠れるようにそうさせたと考えられる。

そして、後世に真実を残すか、偽りを残すかは物語を残すものの心に拠ると作品の中で示す事で、古事記日本書紀で結末が異なる衣通姫伝説の矛盾を解消している。

 

その他のシーンの感想

考察で頭を使ったので、ここから語彙力0の感想を。

  • 長髪×和装×ロングブーツのたまちなが美しすぎで冒頭の舞でテンションが爆上がりする。作画が完全に2次元なのよ。完璧。
  • 少年時代の穴穂皇子を演じた楓ゆきさんが可愛い〜!となり、調べたら95期。わたしが初見で顔がいい〜!となる方の95期率。
  • そしてハーフツインテールの朝美絢さんの破壊力たるや…あまりにも可愛すぎる…しかも漢字が読めなくて「にゃにゃにゃ!」で誤魔化すの何…?可愛いの暴力か?
  • 兄であれ男性と言葉を交えてはいけない衣通姫。第一幕ではそのせいで殆ど台詞がないのだけど、むしろその美しさと佇まいだけで十分に衣通姫の特別さが表現できているから凄い。聞けばこの後咲妃みゆさんはトップ娘役になられたと…これは納得…。
  • ティコに「美しいものは好きだ」と答える時のたま様の美しさよ。わたしも美しいものが好きだ〜〜〜!
  • 人のためについた嘘を衣通姫に見透かされ、堪らず後ろから抱きしめてしまう木梨軽皇子。美しくも切なくて息が止まった。
  • 20歳で穴穂皇子の妻になり、それから5年経っても穴穂皇子になびかない衣通姫の気持ちの強さよ…。愛しい人を遠くにやった憎き相手ではあるけど、わたしならちなつさんの側にずっといたら絆されちゃうよ。
  • 衣通姫木梨軽皇子にとって特別な女性だと気付き、刃を向けるポロ。ポロの健気さもさることながら、一度は自分を殺そうとしたポロを庇って死んでしまう衣通姫の優しい心よ…。
  • 剣技では穴穂皇子には勝てないとわかっていながら、土蜘蛛や衣通姫を守るために1人立ち向かう木梨軽皇子。簡単にいなされ、ボロボロになっても何度も立ち上がる姿に胸が打たれた。
  • そして穴穂皇子と背中合わせになった瞬間、大粒の涙を流す木梨軽皇子…。たまちなの涙に全わたしが泣いた。

 

最後に

今作で衣装を担当された任田幾英先生について調べていたところ、それ以前のインタビューでこう語っているのを見つけた。

舞台衣装は、デザインというよりメッセージなんです。セリフがなくても心情が伝わるように衣装で語るという作業が含まれる。

産経新聞 ENAK 衣装デザイナー・任田幾英さんに聞く(1)

今回の考察が合っているかはさておき、衣装一着一着にも物語がある・という視点はこらからも大切にしていきたい。

’21宙組『Hotel Svizra House ホテルスヴィッツラハウス』4月11日マチネの記録

アナスタシアのライブビューイングで桜木みなとさんに一目惚れしてからちょうど50日後、なんと東京建物Brillia HALLで上演中の『Hotel Svizra House』で邂逅を果たしてしまった。これがまた運命的なのでちょっと聞いてほしい。

一般前売で見事に爆死し、死んだ魚のような目をしながらチケトレでF5を連打するのが日課になりかけていたわたしを、件の沼落ちブログをきっかけに繋がったフォロワー様が掬い上げてくださったのだ。

しかもまさかの、座席が1階C列

え、めっちゃ近くない!!?と喜ぶ一方、「Brillia HALLの1階E列までは地底」という噂を耳に入してしまったため、当日席に着くまで少しドキドキしていた。

実際のところ、身長が176センチもあるのに映画館でチャイルドシートが必要なほど異常に座高が低いSexyZoneの中島健人くんならともかく、一般成人女性には全く問題なかった。(それはそれで切ない)

問題ないどころか、神席だった。もうね、とんでもなく近い。オペラグラスを使ったら毛穴まで見えてしまうんじゃないかってくらい近い。他の公演についてはステージングも違うだろうから何とも言えないが、今作に関しては前列は大当たりです。

 

そんな最高の宝塚生観劇を迎え、ドーパミンセロトニンとエンドルフィンが脳内で大洪水を起こしながらも、一生懸命心のノートに感想を書き殴って来たので言語化していきたいと思う。

 

 

以下、あらすじと感想。

※鑑賞が終わるまでネタバレを回避したい方はここでUターンしてください。

 

あらすじ

公演解説を読むと第二次世界大戦が背景にあるので一見難しそうに見えるのだが、大筋はとってもシンプル。

 

起:ロベルト(真風涼帆)は英国情報部からの命令で、ナチスのスパイ“ウィリアム・テル”を捉えるべく、スイスにあるホテル・スヴィッツラハウスへ向かう。

承:バレエダンサーのニーナ(潤花)と出会いお互い惹かれ合っていくも、そのバレエ団の関係者がどうも怪しい。仕事と愛との間で葛藤が始まる。

転:公演スポンサーであるヘルマン(芹香斗亜)がナチス側のスパイとの証拠を掴むも、全ては罪のない芸術家たちの命を守るための行動だった…

結:国のために全てを捧げて来たロベルトが、芸術の素晴らしさや愛情に触れて人間らしい心を取り戻す。

 

と、こんな感じ。見事な大団円っぷりに、幕が降りた時には多幸感からマスクの下で信じられないほど口角が上がっていたよね。ヲタクにっこにこ。

 

 

印象的なシーンや感想

第一幕

  • 冒頭、ロベルトに今回の任務を言い渡す上官のリチャード・ホールデン(美月悠)。舞台中央で背を向けているロベルトが振り返ると共に全キャストが登場し歌とダンスという流れなのだけど、突然目の前に全員が現れたのでどこを観れば良いのかパニックになり、目が100個欲しい!!!と心の中で地団駄を踏んだ。(結局、九割九分九厘は桜木みなとさんを観ていた)

 

  • ホテル・スヴィッツラハウスのホテルマンの制服の配色(生成りターコイズブルーのワンポイント)に既視感があるな〜と思ったら、ディズニーランドのキャストさんだった。ちなみにディズニーリゾートラインの制服も似たような配色。スズホテルの滞在者気分を味わいたくなったら夢の国へ。

 

  • ニーナがラウンジでバレエ団の到着を2時間以上も待つ羽目になり落胆していると、ロベルトがラウンジのホット・ショコラーデを勧めるのがあまりにもエレガント。紳士オブ紳士。
  • なのにそれに続く「ホワイトチョコが最っ高」の一言で、ロベルトさんは甘党なんですねーーー!とわたしの中のギャップ萌えゲージがトップギアで振り切れた。もうホワイトチョコ食べるたびロベルトのことを思い出す人生になっちゃったよね。へへへ。
  • 気狂いクレーマーことウェリントン子爵夫人(万里柚美)がニーナに扇子泥棒の濡れ衣を着せた上、ニーナを杖で打つ。演技と分かってても痛々しくて、しかも目の前で倒れ込むので余計にオロオロした。
  • ニーナをディナーに誘うも、バレエ団のオーディションに落ちたらそんな気分になれないかもと返され、それなら大丈夫と微笑んで送り出すロベルト。この時はまだ任務遂行のためにニーナに接近しているとわかりながらも、でもそんな誘い方されたら誰だって嬉しいし頑張れちゃうよね!わかる!!と勝手にニーナのわかり手になる。

 

  • その夜、ロベルトとニーナが無事にディナーを共にしていると、バレエ団のメンバーもレストランに現れ挨拶を交わす。ここでユーリー・バシリエフ(桜木みなと)も自己紹介をするのだけど、この時名前を言いながら左胸のチーフの辺りにスッと右手を上げるユーリーの仕草がとっても綺麗で思わず溜め息。
  • レストランからビリヤードのシーンに移る際、男役の皆様が一斉に振り返りながらスリーピーススーツのジャケットを脱いでベスト姿になるのだけど、これがも〜〜〜堪らなく格好良いの…各社スーツメーカーには早急に宙組にCMのオファーをしてください。是非とも。
  • ちなみにユーリーのジャケット脱ぎは、1m前にいても衣擦れの音ひとつ聞こえないんじゃないかってくらい滑らかで痺れた。
  • あと、ビリヤードのダンスシーンのキメポーズでユーリーはキューを正面に向かって突くのだけど、その瞬間にわたしのハートもズガンッと撃ち抜かれた…快感だァ(突然の真風ダニー)

 

  • 翌日、ロベルトはバレエ団の稽古を見学しにボールルームを訪れる。ここ、上手側でロベルトやミハイロフ侯爵(寿つかさ)らが話し、下手側でユーリーとニーナがペアダンスの練習をしているんだけど、わたしの目と鼻の先に艶めかしく体を密着しながら練習をしているふたりがいるからもう視線が釘付けだった。
  • ユーリーの、額から鼻に続く神様に愛された美しいカーブ、彫刻の如く影を落とす首筋の胸鎖乳突筋、深めのVネックから覗く絹のような肌、ピンと天に伸びる背筋、ニーナの腰〜胸を撫でる繊細な指先、細身の黒のパンツに映える小さく引き締まった(むしろほぼない)お尻…頭のてっぺんから足の爪先までその全てがSo Sexy。
  • セクシーの申し子は中島健人くんだと思っていたけど、桜木みなとさんも相当なセクシーの使い手なので、いつかFNSで手合わせして欲しい。
  • 照れてここまでふざけ倒しちゃったけど、ここ、めっちゃエロくて最高です。
  • からのピアノの上にあるタオルを手に取り、首筋の汗を拭うユーリー。汗を拭うだけで絵になるとかそれはもう少女漫画の世界なのよ。そのタオルになりたい人生でしたアーメン。

 

  • あとこのボールルームでのアルマ(遥羽らら)の衣装がすっごく好き!白いブラウスの肩からファーを纏い、ゴールドのベルトがワンポイントなパンツ姿なのだけど、前日に銀座の街で見かけたどのマネキンよりもお洒落で、何よりウエストがとんでもなく細かった。
  • この後アルマが着るエメラルドグリーンのスリットワンピースも魅力的だし、アルマのものだけでなく今作に出てくるお衣装はどれも素敵だったな。プログラムと別に、Perfumeみたいな感じで衣装集を出して欲しい。
  • ボールルームにいる一同が歌い踊るシーンでは、ミハイロフ侯爵(寿つかさ)とユーリーが肩を組んだり腕を絡めたりするので、心の中でキャーキャー言ってた。すっしー組長大好き!あとここでの腕の絡め方が異様にえっちなユーリーにもご注目。

 

  • その後、ボールルームに残ったロベルトとニーナが語らい、踊るシーンでは、眩しいほどに可愛くて純真なニーナがディズニープリンセスにしか見えなかった。辞書の「プリンセス」の項目に「或いは潤花」と付け加えたい。
  • 学生時代にサークルでお芝居をしていたロベルトは、なぜ役者の道に進まなかったの?と聞かれ、あがり症で観客の視線が集まるのが苦手だったと話す。「オペラグラスで見られたりとか」と言いながらロベルトが実際の客席に目線を飛ばした途端周りから一斉に声が漏れていて、これが真風さんの目線の威力…!と感動した。

 

  • 明くる日の稽古でやけに苛立っているユーリー。煙草に火をつけ、不機嫌な顔で下手から上手に移動、ドカッと椅子に脚を組んで煙草をふかす。(ちなみに左脚が上だったと記憶)
  • イライラしてて感じが悪いのに、それすらも魅力的だから怖い。でもこればっかりは仕方がない、だって悪いのは格好良いってBADDYで習ったもん!は〜い、もうお手上げ!絶対服従!!好き!!!(語彙力喪失)

 

  • ニーナの親友のシルヴィ(春乃さくら)がドイツ兵オットー(聖叶亜)と恋に落ちたと手紙で知り、ニーナが心を乱しロベルトが諭すシーン。
  • 負の感情を抱えてしまい思い悩むヒロインをヒーローが癒しつつ、ヒーロー自身も人間らしい感情を取り戻していくこの流れ、進研ゼミならぬアナスタシアで勉強したぞっ…!と思いながらも普通に泣いた。チョロヲタなので。
  • 任務を遂行するために自分のことを全ては明かせないロベルトが、ニーナからの質問に答えられず、代わりに「このキスがその答えだ」と口づけをする。
  • ニーナへの最大限の自己開示のために取った行動が『キス』なの、100点満点では…?これを超える答えはどこにもないよ…正にスイートアンサー。
  • あと、シルヴィの♪彼はドイツ人〜だけどいい人〜のフレーズが頭から離れない。澄み切ったステキな歌声だったなぁ。オットーのおどおど感も堪らなくキュートだった。幕間にプログラムでお二方のお名前をすぐチェックした。春乃さんと聖さん、覚えたぞ…!(逃げて)
  • ここでずんヲタに業務連絡。ユーリー様のお衣装は第一幕で3種、第二幕で新規3種、フィナーレで新規1種の計7種でした。スチール写真にもなった高貴なハイネック姿は第一幕の結びから観れるよ。

 

第二幕

  • 業務連絡その2、第二幕冒頭はユーリーのソロダンスから始まるので幕が上がった瞬間に目をかっぴらいて見てください。フリルがあしらわれたグレーのシャツに黒のパンツ姿だよ。
  • ドイツ軍の軍用機墜落による爆発騒ぎや、各々の計画が思うように運ばずに高まる不安感を、全員が煙草をふかすことで表現していたのが良かった。BADDYだと煙草は悪くて格好良いことの象徴で、今作では陰鬱な気分の象徴なんだなと。
  • 個人的にはアルマの喫煙が一番刺さる。狡猾でセクシーな女性が、もの言いたげにふかす煙草が癖なんですよね…。

 

  • ロベルトがエリーク・カウフマン(瑠風輝)とウィリアム・テルに関する情報をやりとりしているシーン。ここでロベルトがジャケット内側の胸ポケットに煙草ケースが上手く仕舞えないちょっとしたアクシデントが起きるのだけど、表情を1ミリも変えずに続ける真風さんにゾクゾクしちゃった。
  • ここで「ジャニヲタ、ステージ上のアクシデントにも冷静に対処する姿にキュンとしがち説」を提唱していきたい。

 

  • ホテルでのバレエ公演で成功を収めればアメリカのカンパニーに移るチャンスを得るも、まだ迷いがあるニーナ。そんなニーナにロベルトは「一度きりの人生、愛するもののために生きるんだ」とアメリカ行きを後押しする。
  • この台詞、戦争下でも自分の夢を諦めずに追いかけて欲しいというロベルトからニーナへのエールであると同時に、1年以上続くこの非常事態にも負けず宝塚を愛し守り抜く宙組トップスターからの宣戦布告とも取れませんか…?感動のあまりわたしはここで鳥肌が立った。

 

  • ヘルマンとアルマが旧友のラディック(紫藤りゅう)の無事を知り安堵するシーン。追憶の中のラディックがステージ中央、アルマとヘルマンがその前方に立ち綺麗な三角形を作っているのだけど、途中からアルマがラディックに抱きついて陣形が崩れる。片や忘れられない元恋人、片やただの友達。身を引いたヘルマンの表情が切ない。
  • ヘルマンはアルマに「ラディックを守るのは君のためじゃない」と言うけど、本心はきっと違うよね。自分とアルマが結ばれる未来はもう随分前に手放したけれど、世界中の誰よりも一番にアルマを想っているからこそ、アルマの心の片隅にずっといるラディックを自分の命に代えても救いたいんでしょう…?そのために国家を敵に回してでも、アルマの笑顔を守りたいんでしょう…?
  • 美しく気高い当て馬・ヘルマンに対抗馬出すならもう花沢類しかおらん!と、心の中のノブが叫んだ。

 

  • 反抗期真っ盛りの中学生の如く当たり散らかしていたユーリーが、ダンサーのジョルジュ(泉堂成)がホテルに到着した日を境に、飼い主に構ってもらえるのが嬉しくて尻尾をぶんぶん振ってる仔犬に変貌する。ジョルジュはユーリーにとって一体何なんだ…?でもジョルジュのおかげで、何だかんだ言ってにこにこなユーリーが一番好きなんだと気付けたよ。サンキューな。
  • ダイニングバーでユーリーが歌う曲は、大変な状況の中でもバレエができるユーリー・バシリエフの喜びであり、同時に今ステージに立つ桜木みなとさんの心そのものに触れられた気がして、嬉しくって泣きそうになった。
  • そしてこの曲のハッピー感が堪らない!一刻も早く音源を販売して欲しいし、早くわたしも団員と一緒に「ユーリーに乾杯!」と思う存分叫びたい。
  • あと、ダイニングバーでのユーリーが子犬だとしたら、ジョルジュはまるで番犬。ユーリーに迫る女性からユーリーを守りつつ、酒に酔ってボディータッチ過多になっているユーリーを独り占めするジョルジュ。…ジョルジュはユーリーにとって一体何なんだ…?(2回目)

 

  • ダイニングバーでひとり潰れていたニーナを自室で介抱するロベルト。聞けば、ドイツ兵オットーと恋に落ちたシルヴィが、反ナチスレジスタンスに襲撃され舞台に立つことができなくなった上、オットーはシルヴィを守るために命を落としたことに心を痛めていると。
  • ここ、ロベルトがニーナに話したことが、わたしが個人的にずっと悩んでいたことにも重なって涙が止まらなかった。いつの時代も、今日と同じ明日が続く保証なんてどこにもない。「先の幸せ」を案ずるより、「今の幸せ」を大切に生きていかなくちゃいけないんだ。
  • そしてふたりはその夜ひとつに結ばれるのだが、この世で一番穢れからかけ離れたベッドシーンだった…情操教育上むしろ良さそう。
  • ちなみに、この一連のシーンでボロ泣きしていたところ、暗転したタイミングで涙と一緒に片方のコンタクトまで落とすというアクシデントが発生。幸いにも手の中に落ちてくれたので何とか装着できたが、1分くらい視力0.03の世界で何も見えなかった。

 

  • バレエ公演前夜のボールルームで、遂にナチスのスパイである”ウィリアム・テル”がヘルマンだと明らかになる。だが、全てはユダヤ人系の芸術家の命を救うべく、ナチス側と取引をするために行っていた事だった。
  • そして、かつて"ウィリアム・テル”を名乗っていた女スパイとホールデンが関係を持ったことを知ってしまったが故に、ロベルトの恩人・ネイサンは無実の罪で殺されたことも明らかに。
  • ヘルマンのスパイ行為によって被害を受けた人がいるのことは紛れのない事実だが、ヘルマンもまたこの戦争下で己の正義に従って人命を守っていた。
  • ロベルトはヘルマンに、二重スパイとして英国情報部に協力すると約束してくれたら、明日のバレエ公演が無事に終わるまで告発はしないと約束する。
  • ホテル・スヴィッツラハウスで過ごしたこの数日がなかったら、きっとロベルトは即刻ヘルマンを英国情報部に突き出してたのかと思うと、やはり人を一番変えるのは恋なんだなぁと思った。

 

  • そして遂に『シェエラザード』公演当日、公演を心待ちにしていたお客様がホテルに続々と集まってくる。
  • 中にはユーリーを観るためにフランスから駆け付けたご婦人もいたので、同志よ…!と心の中で会釈した。ユーリーが公演に出るならなら世界の裏側にだって駆け付けちゃう気持ち、わかるよ。

 

  • 遂に幕が開く。シェエラザードは『千夜一夜物語』をベースに作られた作品のため、アラビア調の衣装。金やパールの装飾がふんだんに施されていてとっても煌びやか。
  • 下手前列の最高ポイントは、ニーナが上体を仰け反るポーズのままで止まるところで、浮き出た肋骨の一本一本や、呼吸とともに上下するお腹まで綺麗に見えるところです。
  • ゾベイダ役のニーナと金の奴隷役のユーリーのダンス、とにかく素晴らしすぎた…!もう目を離せなかった。絶対にこのバレエシーンの舞台写真が欲しいからキャトルに念を送っているところ。
  • 作中でも話題になったように、文字通り血の滲む努力を重ねてきたからこそ、今この瞬間輝きがあるんだと思うと…演者にとっても観客にとっても二度と来ることのない、かけがえのない時間を共有できるステージという場所はやっぱり凄い。
  • 戦争下でのエンターテインメントの在り方が、このコロナ禍の現代に重なるなと節々で思っていたが、ここで歌われる『Lives in the theater』を聴いて確信した。やはりこの作品は、平穏が脅かされた世の中でひとときの夢を見せるエンターテインメントの必要性を訴えた作品なのだ。
 
  • 大成功を納めたバレエ公演の翌朝、一向はホテルを後にする。
  • アルマにご執心なチャールズ(希峰かなた)が、別れ際にスイスではプロポーズの意味するエーデルワイスの花束と共に指輪を差し出すも、アルマに笑顔で指輪ケースを閉められ断られる。コメディ仕立てなこの流れに会場全体がドッと湧いた。アルマ、どこまでも憎めない可愛い女だなぁ〜。
  • あと個人的に、チャールズとヴラドおじさまに近いものを感じていて。ヴラドから闇の成分を完全に取り払って、ただただ無邪気に人を愛したらこんな感じかな〜なんて。
  • そして物語の冒頭でニーナがウェリントン子爵夫人から杖で打たれたところと全く同じ場所で、バレエ公演を通じて心を取り戻したウェリントン子爵夫人とニーナがハグをしたのにはジーンと来た。子爵夫人も、戦争によって負った深い心の傷を、芸術によって癒すことができたのだ。やはりどんな世でも、エンターテインメントだけは絶対に止めちゃいけないんだと改めて強く思った。
  • ロベルトはニーナとの別れ際に、エーデルワイス花言葉が「大切な思い出」であると知り、それをニーナに教える。そしていつかアルプスの山々にエーデルワイスの花が咲き誇る頃、また再会しようと約束する。
 
  • それから5年後、ロベルトとニーナはホテル・スヴィッツラハウスで再会を果たす。
  • ロベルトが人の心を取り戻す過程でニーナに掛けた言葉「一度きりの人生、愛するもののために生きるんだ」がニーナの口から出た時には、ぎゅっと胸が締め付けられた。彼女はアメリカに渡りバレエダンサーとして成功してもなお、このロベルトの言葉をお守りに生きていたんだよ…尊い
  • そしてロベルトは花言葉が「大切な思い出」であるエーデルワイスの花束をニーナに渡し、5年前には敢えて黙っていたもう一つの意味、スイスでエーデルワイスはプロポーズの意味だと告げる。
  • ロベルトからのプロポーズに対し、「このキスがその答えよ」とロベルトに口づけをするニーナ。甘ーーーーーい!!!!!
  • と言うか、再会した時にこうやってキスをしようと思っていたからこそ、5年前の別れ際でニーナは敢えてロベルトからのキスを拒んだってことよね?純真無垢なプリンセスかと思っていたけど、実は策士でした…?おかげで最高のものが見れました、ニーナ万歳!
  • 最後にロベルトが言う「Unus pro omnibus, omnes pro uno (一人は全てのために、全ては一人のために)」という言葉は、ホテルスヴィッツラハウスのフロントの壁にずっと刻まれていた言葉でもある。(壁には全て大文字で書かれていた)(ちなみにラテン語らしい)
  • この怒涛の伏線回収っぷりよ。全てのパーツが最後にガッチリとはまり、一つの絵になるラストシーンって素敵だよね。素晴らしい物語の結びに、心からの拍手を。

 

フィナーレ

  • フィナーレ冒頭が桜木みなとさんの歌唱で、さっきまで泣いてたのにすぐ笑顔になったワイ。
  • 本編でわたしは笑顔のご贔屓が一番ツボだと知る訳だが、このフィナーレではアイドルなのか!?ってくらい終始キラッキラの笑顔だったからもうずっとキュンキュンしていた。
  • 途中二階席あたりにバチーン☆とウインクをキメてて、完全にジャニヲタの血が騒いだ。心の中で「ウインクして」のファンサ団扇を掲げた。
  • 正直こうなるとご贔屓しか見る余裕がなくて、でも本当はステージ上の全員をそれぞれつぶさに見たいし、円盤の特典にソロアングル付いてくれないかな(強欲)
 
 
以上が、わたしの生観劇デビューの記録である。
今回御同行させてくださった方もとってもお優しい方で、宝塚もヅカファンもあったかくて素敵だなぁとしみじみ。
そして50日前に桜木みなとさんに一目惚れしたわたしへ。やっぱり見る目あるよあんた、最高だよ。

 

'21月組『幽霊刑事~サヨナラする、その前に~』の記録

幽霊刑事、千秋楽おめでとうございます。わたしは20日の生配信で拝聴させていただいたので、その感想をば。

 

絶賛宝塚勉強中の身なので、月組の演目を観るのはBADDYに続いてこちらが2作品目。真っ先に思ったのが、珠城りょうさんは悪役を演じても正義の味方を演じても素晴らしいということ。どっちも好きすぎて選べないよ、ドラえも~~~ん!って心の中ののび太が叫んだよね。

 

 

以下、あらすじや印象的なシーンなど。

 

あらすじ

恋愛と本格ミステリーが融合した有栖川有栖氏著の傑作「幽霊刑事」が、心温まるミュージカルとして、珠城りょうの思い入れある宝塚バウホールに登場します。
巴東署の刑事・神崎達也が、夜の浜辺で突然上司に射殺された・・・が、結婚を控え、殺された理由に全く心当たりがない神崎は、成仏できず幽霊となってしまった。母親にも、フィアンセの森須磨子にも自分の姿は見えず、虚しさに苛まれる神崎だが、青森出身でイタコの血を引く霊媒体質の警察学校同期刑事・早川篤にだけは自分の姿が見え、声も聞こえた。神崎は唯一コミュニケーションが取れる早川に事件のあらましを話し、幽霊刑事と霊媒刑事の「最強コンビ?」がタッグを組んで捜査に乗り出す。しかし事件解決はまた、神崎がこの世に別れを告げ、昇天することをも意味していた。「愛する人の為、消え去ることもまた、愛」。

公演解説 | 月組公演 『幽霊刑事(デカ)~サヨナラする、その前に~』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

 

印象的なシーンなど

  • 神崎達也(珠城りょう)のトレンチコートの似合い方が異常!も~~~とにかく格好良い!ベストジーニストのトレンチコート版を今すぐ作ろう。
  • 前述の通り月組公演を観るのは今作で2回目。珠城りょう=バッディの認識だったので、神崎がバッディと全く違う声色で「本当に同じ人…?」と混乱した。
  • 巴東署のメンバー紹介ソングがポップで可愛かった。中井署長(朝霧真)が「タヌキ親父」呼ばわりされているけど、顔がいいのが隠しきれていない。
  • 幽霊になった神崎が、同期の早川篤(鳳月杏)には見えるとわかるシーン。「死人に口なし」「縮まる寿命があるのが羨ましい」「生き地獄だよ!」「死ぬ気で頑張るんだ!」など、もう死んでいることをネタにしたコントのような怒涛の掛け合い。そのやりとりがとにかく自然で。用意された台詞を言っているのではなく、ふたりがその場で咄嗟に思い付いた言葉を投げ合っているかのような感覚に陥った。たまちなの演技力を見せつけられてしまった…(後からおふたりのことを"たまちな"と呼ぶのだと友人から教わった…たまちなForever…)
  • ちなつさんの、厚みのあって安定感抜群の歌声も素敵だった…きゅん。
  • 新田(紫門ゆりや)と経堂保美(蘭世惠翔)の回想シーンで「忘れてくれ、れ、れ…」「やすみ、み、み…」とセルフエコーを効かせてるのは面白かった。
  • あと漆原副所長が自宅で「うるさ~~~~~い!!!」と旦那と子どもたちに怒鳴るシーンも笑った。"死"が絡んで来るとシリアスに寄りがちだけど、コメディ要素もバランスよく入っていて楽しく観れる作品。
  • 母と妹の元を訪れ、ふたりの会話に静かに涙する神崎。左目からツーっと流れる涙があまりにも綺麗だった。
  • 聾唖の少女・天乃愛(白河りり)は皮肉にも幽霊になってから上手に話したり歌ったりできるようになるのだけど、それを観ても全くギャップを感じないくらい、生前手話で話している愛ちゃんから天真爛漫さが滲み出ていた。屈託のない笑顔がまるで天使のようだった。素晴らしい演技力!
  • 須磨子(天紫珠李)が幽霊になった神崎の存在をなかなか認めようとしないシーンには胸が痛くなった。愛する人に存在を認めてもらえない神崎はもちろん、突然殺された婚約者の幽霊が自分には見えない哀しみと憤りが爆発する須磨子の姿は見ていて辛かった。
  • 切手のない贈り物を聴きながら泣いたの、人生初だと思う。
  • 幽霊になった神崎が家庭訪問と称して同僚や上司の家を訪れ、家での様子を観察して来たと早川に話すシーンで、なぜ毬村主任(輝月ゆうま)だけ家での様子ではなく向かいの喫茶店でスティックシュガーをくすねていた話をするんだろう?と少し違和感を覚えていたのだが、最後の種明かしでスティックシュガーは麻薬の密売方法だったと明かされ、ここは伏線だったのか~~!と悶た。(最後まで犯人が誰か全くわからなかった人)
  • 早川を通じて、須磨子にコートの下の銃を取るよう手話で指示を出す神崎。これには痺れた…。生前、神崎は愛ちゃんとコミュニケーションを取るために手話を勉強しているのだが、ここは単に彼の誠実さを表現しているのだと思っていた。まさかこのラストシーンに繋がるとは。脱帽。
  • そして須磨子にとって、終始見えない存在である神崎が、本当にそこにいると強く確信できたのはまさにこのシーンだったのではないだろうか。神崎と共に過ごした日々があったからこそ、窮地を切り抜けられた。
  • 序盤で神崎自身が言っている通り、幽霊になってしまった神崎は自分の"手"では誰も守ることはできない。けれど、死んでもなお”手話”を通じて愛する人を守り抜くことができた。素敵なオチに乾杯。
  • 天国から迎えに来た愛ちゃんが「お前は幸せに生きたか」「お前は誰かを幸せにしたか」と尋ねると、笑顔で答える神埼。生きていたらもっと幸せになっていたであろう神崎が「とどまることが赦されないなら、俺は微笑んで消えていきたい」と理不尽な死を受け止め成仏する姿に、涙が止まらなかった。そして須磨子、どうか幸せになってね…。

 

最後に

ショーのあと「見えてますか〜?」とにこにこ手を振り、ご挨拶で口が回らず自分の頬に手をやる珠城りょうさん。え、こんなにハンサムなのに実はとっても可愛い人なの…?しんどすぎる、こんなのズルい。

そして「ハート投げを覚えたんです!」と言われハテナが飛んでしまったのだけど、そのあとの茶目っ気たっぷりな「これでもくらえ~!」で、可愛い~~〜〜~!!!と湧き、その後ちなつさんの格好良すぎる「これでも喰らえっ!」で瀕死に。

思わずジャニーズのライブ映像を観てても出ないタイプの悲鳴が出ちゃったよ。たまちなForever…。

 

そして明日は美園さくら様のミュサロ生配信を拝聴する予定です。楽しみだな〜!

'18月組『BADDY-悪党は月からやって来る-』の記録

例のアナスタシアを勧めてくれた友人から、「ぜひ月組BADDYも考察して欲しい」とリクエストをいただいたので、早速プライムビデオでレンタルしてみた。便利な世の中に感謝。

 

月組の演目を観るのはこちらが初めてなのだが、宝塚ってこんな設定もありなの!?とビックリするようなトンチキ設定である。(動画は03:00からが本作)

それなのに、善く生きるって何だろう…と考えさせられる作品でもある。そんな唯一無二の魅力を、少しでもお伝えできればと思う。

 

 

以下、あらすじや考察など。

 

あらすじ

舞台は地球首都・TAKARAZUKA-CITY。世界統一され、戦争も犯罪も全ての悪が鎮圧されたピースフルプラネット“地球”に、月から放浪の大悪党バッディが乗り込んでくる。バッディは超クールでエレガントなヘビースモーカー。しかし地球は全大陸禁煙。束縛を嫌うバッディは手下たちを率い、つまらない世の中を面白くするためにあらゆる悪事を働くことにする。彼の最終目標はタカラヅカ・ビッグシアターバンクに眠る惑星予算を盗み出すこと。しかし、万能の女捜査官グッディの追撃が、ついに彼を追いつめる!

月組公演 『カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-』『BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

103年間犯罪発生件数0の地球に、月から大悪党バッディが来たからさぁ大変!という大筋。これだけ読むと幼児向け絵本かな?と思うようなトンチキ設定である。

 

演出家・上田久美子さんが語る見どころ

“格好いい”ということは“悪っぽいこと”と表裏一体で、人はなぜかそういう人物に惹かれてしまう…という部分を描きたいです。現在の社会は良くも悪くも善悪の線引きが厳しくなり、以前はグレーゾーンだった範囲も悪と見なされるようになったと感じています。それが決していけないわけではありませんが、人間は無菌状態に置かれると、「もっと自由でいたい」という願望が芽生えるものです。

演出家 上田久美子が語る | 月組公演 『カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-』『BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

こちらは演出家の上田久美子さん自ら、構想のルーツを語っている部分。

つまり本作は「本当に幸せな社会ってなに?」という問題提起を投げかけた作品なのである。ネガティブに寄りそうなテーマを、ポジティブで魅力的なショーに昇華している上田久美子さん、天才だ…。そんな問題提起を頭に置いて、作品の考察をしていきたい。

 

印象的なシーンと考察

"悪い"ってなに?

冒頭、王子(暁千星)が「悪いってなに?」と尋ねると、女王(憧花ゆりの)は「それはお前が知る必要のない言葉」と返す。

  • 「月には地球に居られなくなった悪い人間が潜んでいる」という台詞からもわかるように、悪い人間をひたすらに排除した社会が"地球"ということになる。
  • 103年間犯罪発生件数0の平和な社会を謳っているが、グッディ捜査官(愛希れいか)をはじめとする犯罪を取り締まる人間が今もなお存在している訳だから、"地球"は厳罰化により犯罪発生が抑えられた超監視社会と推測される。
  • "悪い"の意味がわからない王子と、"悪い"の認知からも保護しようとする女王という構図は、この社会において人々は王子同様に無菌状態で保護されていることがわかる。
  • 女王は「人生の目標は天国に行くこと」と国民に掲げる。"悪い"をひたすら排除した先に幸せがあると信じているが、果たして。

 

スイートハートは男?女?

見るからに男性的なバッディ(珠城りょう)と、中性的で美しいスイートハート(美弥るりか)が熱いキスをする姿に、グッディとポッキー巡査(月城かなと)は「彼は男?わからない!どうして!?」とパニックに。

  • 法律を遵守する立場のグッディたちが過剰な反応を見せることから、"地球"には異性愛者しか存在していない可能性が示唆されている。
  • そうなると"地球"は、犯罪者だけでなくマイノリティも排除した社会ということになる。雲行きが怪しくなってきた。それって本当に幸せな社会なの?とここでも考えさせられる。
  • 因みに、スイートハートは最後まで性別がどちらとも取れない謎めいたキャラクター。話し言葉は女性的だが一人称は僕だし、基本的にはパンツスタイルだが途中大胆なスリットの入った妖艶なドレス姿にもなる。勝手にカードキャプターさくらのルビー・ムーンのような存在と解釈した。(世代がバレる)
  • バッディとスイートハートのシガレットキスは美しすぎて卒倒。あの瞬間のステフォが欲しくて欲しくて泣いた。

 

シーフードの格好はショーの衣装?それとも…

バッディが訪れたレストラン・BLUE LAGOONに、ポッキー巡査と王子らが潜入捜査。同じく潜入捜査を行なっていたグッディは、バッディを無銭飲食で現行犯逮捕。

  • このレストランは2つの読み方ができる。①ロブスターやホタテなど食べ物に扮した従業員がショーを行うレストラン、②人間が食べ物に扮しているのは"人間自身が売り物である"ことの比喩表現で、実際はレストランでなく性的サービスを提供する店。
  • わたしは②だと思って観ていた。理由としては、ホタテに扮したグッディをバッディが連れて店を出ようとすると、店員は「お持ち帰りならお代を」と声を掛ける。①の解釈だと従業員を連れて店を出るのにお代が発生すること自体に違和感があるが、②なら料金が発生するのも理解できる。代金を支払わず逃走するバッディに「食い逃げだー!」と店員が叫ぶのも、人間=食べ物とこの場では表現されているので話が繋がる。
  • そしてこのあと、俺の事が好きなのか?と勘違いするバッディに対し、グッディは「そんな訳ない、これは囮捜査よ」と返すのだけれど、単にレストランの従業員に扮しているなら囮捜査とは言えないだろうし、やはりこのシーンは②の意味で捉える方がしっくり来る。

 

悪いことがしたい、いい子でいたい

グッディとの出逢いをきっかけに悪党らしくなくなっていくバッディと、逮捕しなければならないはずのバッディに心惹かれてしまうグッディ。

  • 悪いものに心惹かれネガティブな感情を知る"地球"の人々と、愛を知ってしまい悪党らしくなくバッディの葛藤が表現された歌唱シーン。
  • 永く無菌状態に置かれた"地球"の人々は、善悪についての判断を自らしたことがなかったため、葛藤すること自体が初めての行為で混乱している。
  • グッディはこのシーンを境に、ロング→ボブ→ショートと髪が短くなっていく。彼女の原動力であった愛や正義といったポジティブな感情が、怒りや憎しみといったネガティブな感情にすり替わっていくのが、"乙女の命"とも言われる髪の毛で表現されている?
  • この後のグッディとグッディーズによる感情剥き出しのロケットダンスには圧倒された…!

 

ポッキーの空回りな片思い

有能なグッディ捜査官に想いを寄せるも、いつも置いてけぼりにされるポンコツなポッキー巡査。バッディの様に悪事を働けば、彼女が追いかけてくれるかも!と悪事に手を出してしまう。

  • スイートハートからちょいワルレッスンを受け、パスポート偽造の才能があることが発覚。グッディに自分を追いかけてもらいたいが為に偽造パスポートを高額で販売し、思惑通りグッディに追われる対象に。
  • 逆にグッディと出会ってから大した悪事を働かなくなったバッディ。グッディからも追われなくなり、スイートハートからも「こんなの君じゃない」と言われ、とびきり悪いこと(銀行強盗)を企てる。
  • ポッキーもバッディも行動原理は同じで、悪いことをすればグッディに構ってもらえると思っている。とんだ構ってちゃんである。

 

信念を貫くポッキーとグッディ

ビッグシアターバンクで惑星予算を盗み出し、アジトに戻ってきたバッディたち。しかし、バッディ側についたはずのポッキーがアジトを爆破!そしてそこにグッディが現れる。

  • 一度は歪んだ恋心で犯罪に手を染めてしまうポッキーだが、巡査として平和を守る信念を貫くために、死を覚悟でアジトを爆破。
  • 燃え盛るアジトの中で、バッディとグッディは情熱的なキスをする。グッディを激しく求めるバッディに対し、グッディは彼の背中に回した手をぎゅっと固く握りしめる。この姿から、彼女はあくまでバッディを憎き敵と認識していて、平和を守るために一緒に死ぬことを選択したと読み取れる。

 

結局、"悪い"ってなに?

フィナーレでは、アジトを爆破したポッキーや憎しみという感情を知ったグッディだけでなく、様々な犯罪を犯してきたはずのバッディやスイートハートも全員天国にいる。

  • バッディたちも天国にいるのは「人は何事もなく生きることで天国に行く」と信じ"悪い"を排除してきた社会に対して、人が定めた"悪い"の定義は必ずしも正しくないという皮肉か。
  • 善悪の判断を他者に任せるのではなく、より善く生きるために自分自身で考え、行動していこうよ・というメッセージにも取れる。
  • この作品で描いた本当の"悪"は、法律を守らないことではなく、自分を偽り信念を曲げてしまうことだとわたしは解釈した。

 

最後に

BADDYはストーリーも素敵なのだけど、何より曲が良い!バッディのテーマソングなんて歌詞は全然格好良くはないのに、キャッチーで一度聞いたら頭から離れない。スキップしながら口ずさみたくなるようなハッピーなメロディである。

パレード(BADDY)

パレード(BADDY)

そして何よりこのパレードのシーンがもう癖に刺さりまくりで。眼鏡を外してウインクをキメるポッキーも、セクシーなロングブーツ姿で色気ムンムンなスイートハートも、煙草をふかしてるバッディも格好良い!好き!!てなる。

 

ただ、こうやって素敵だなって思う方が既に退団されていたり、退団が決まっていたり…生きてる限り知ることに遅いはないけれど、でももどかしい〜!

と、いうわけで今週末は幽霊刑事の生配信を拝聴いたします。

'19宙組『オーシャンズ11』の記録

宙組アナスタシアで宝塚の門戸を叩き、その翌週には一人キャトルレーヴで息をするように桜木みなとさんと和希そらさんのお写真を購入したジャニヲタです。皆様ごきげんよう

 

宝塚について日々お勉強する中、ひょんなことからプライムビデオでも宝塚の作品が観れることを知り、早速'19宙組オーシャンズ11をレンタルしてみた。

何故オーシャンズ11を選んだのかと言うと、以前宝塚歌劇HPの公演バックナンバーに一通り目を通した際に、一番印象に残っていたのがオーシャンズ11のポスターだったからだ。

結果、素晴らしい演技の数々にすっかり熱を上げてしまい、7日間のレンタル期間で丸3周した。たったの880円で8時間近くも楽しんでしまい、なんだか申し訳ない気すらする。この気持ちはキャトルに持っていこう。宝塚Forever。

 

 

以下、拙い感想。今回はアナスタシアとの演技の振り幅に特に驚かされた3人を中心に書いてみた。

 

あらすじ

大筋は原作のオーシャンズ11と同じだけど、宝塚版ではテスが若きディーヴァとなっていたり、ベネディクトの新しいホテルがエコホテルでNPO団体も絡んでいたりと設定や登場人物がゴージャスになっている。

 

演技の振り幅に特に驚かされた3人

桜木みなと|テリー・ベネディクト

アナスタシアで演じた詐欺師ヴラドは、真意の読めないお茶目な三枚目。冷酷非道で強欲なテリーとは全く異なる役どころだが、共通項は悪い男。

桜木みなとさんが演じる悪い男は、何故だか魅力的な男に映る。ご自身の愛され属性が役にも作用しているのか…?兎にも角にも愛される悪役って素敵。

以下、桜木テリーの好きなシーン。

  • アドリブの流れで、ベス(愛白もあ)から「ボスは…?」と腕立て伏せを求められ、嫌そうな表情を浮かべながらも跪き、「ベス…ッ!最高のぉ…秘書だ〜!」と雄叫びを上げながら腕立てをする姿に合掌。
  • テスの夢の中でテリーがアダムに扮するシーン。テスを前に白い歯を見せて笑っているように見えるが、終始目が全く笑っていない。このシーンだけ観ても、テリーの張り付いたような笑顔から彼が本性を隠しているのがわかる。目で訴える演技が本当に上手い。
  • テスからおやすみのキスを拒まれた後、気にしてないよと言わんばかりの優しい微笑みを見せるのに、部屋を後にする際にほんの一瞬だけ、苛立ちで表情が歪むのも良い。この一瞬でいい人を演じきれず気性の荒さが垣間見えてしまった感じが堪らない。
  • ラスティー(芹香斗亜)が医者に扮してソールを回収するシーン。ここは新喜劇か?と思うほどのぶっ飛んだ芹香ラスティーのアドリブに、途中から笑いを堪えきれなくなった桜木テリーが可愛いかった。
  • イベントには出演できない、私はあなたの人形じゃないと訴えるテスに対し「君は…俺がベガスで作った中で1番美しく、価値があるものなんだ」と物扱い発言。さらにこの後テスの手を取るのだが、まるで壊物に触れるようなちょっと不自然な引き寄せ方をする。怒号のあと、「歌うんだテス…俺のために!」とテスと目も合わせず高笑いしている姿は正に悪役。痺れる。

 

和希そらライナス・コールドウェル

アナスタシアでは皇太后の侍女のリリーを演じた和希そらさん。リリーがバーで高らかに歌い上げるシーンでその歌声に魅了されたのだが、今度はライナスのダンスシーンで息を呑むことになる。

そして、セクシーで魅力的な大人の女性にも、あどけなさが残る青年にもなれる演技の振り幅…一体どうなっているの…?

以下、和希ライナスの好きなシーン。

  • ライナス初登場のダンスシーン。とにかくステップが軽やかで、音もなくふわっと飛んでいるような、重力を感じさせない動き。嵐育ちのわたしは大野くんのダンスに近いものを感じたのだけど、後で和希さんはヒップホップ出身と知り納得。
  • リリーの歌声は伸びやかでド迫力!って感じだったのに、ライナスにはその影もなく、繊細で可愛らしい声色。その違いだけでも楽しめちゃう。
  • 「あんたたちと飛んでみるよ!」とダニー(真風涼帆)たちと手を組むことを決心したライナスが、ダニーと踊るシーンは素敵だったな…これ、数年後に和希そらさんがダニーとして次世代のライナスと踊ってるの見て泣くやつだ…。
  • ライナスが賭博委員会に成りすますシーンでは、スリの技術は一流でも詐欺はズブの素人です、と言わんばかりの見事な棒読み演技。か、かんわい〜!

 

寿つかさソール・ブルーム

アナスタシアでマリア皇太后を演じたお方が、こちらでは往年のカリスマ詐欺師ソールを熱演。

どちらもご老人ではあるのだけど、立ち姿から全く異なる。凛とした佇まいのマリア皇太后に対して、ソールは首も腰もだらしなく曲がったおじいさん。同じ人間が演じているとは到底思えない変貌っぷりに感服。

以下、寿ソールの好きなシーン。

  • ソールがライナスの父・ジミーとかつて宝石強盗をした思い出を語るシーン。警察に包囲されたところを命からがら逃げたエピソードを、たった一脚の椅子だけを使って臨場感たっぷりに再現する演技に痺れた!
  • ソールの「飛ぶんだ、ライナス」というたった一言の台詞の間にも、色んな表情が詰まっている。ギュッと眉間にシワを寄せ厳しい顔をしたかと思ったら、慈しむような柔らかい表情に。表情作りが素晴らしすぎて、これが宙組組長…!と平伏した。
  • ソールがダニーらに演技指導するシーン。「あなたとの素敵な出会いに…愛してるぜ」と投げキッスをする姿は、おじいさんのはずなのにあまりにも格好良くてビックリした。だるだるの服を着ているのに紳士に見えるんだもの。カリスマ詐欺師の名は伊達じゃない。
  • そしてダニーらが台詞を復唱する時には真風ダニーがカメラに抜かれ、その格好良さに思わず唸る。(ただ強欲なヲタクなので、全員の投げキッスが見たいからこの瞬間だけ画面を11分割してくれと思った)

 

印象的なシーン

  • フランク役の澄輝さやとさん、手脚が長く男性モデルのような素敵な体躯。役柄に合わせた褐色肌もよく似合う。めちゃくちゃ格好良い!ただ、この公演で退団されたと知り「推しは推せる時に推せ」という言葉を思い出す。
  • リヴィングストンの既視感の正体:渋谷ディビジョン
  • リヴィングストンを羽交締めにする警察官役の琥南まことさん、お顔が良いなぁと惚れ惚れ。
  • テスからビンタされて「快感だァ」と言うダニー、あまりに格好良すぎて心の中のノブと大悟が同時にちょっと待てぇボタンを押した。
  • テリーが逃走したダニーを捜索するシーンでラスティーが放つ濃厚な投げキッス、お顔の作画が完璧。
  • ちなみに、芹香斗亜さんのことは勝手に「宝塚の赤西仁」だと思っている。長めのやんちゃな襟足もオールバッグもよく似合う端正なお顔立ちにセクシーな歌声。宝塚でごくせんやりません…?
  • 「(離婚届は)要らないわ!」と破り捨て、ダニーにぴょんと抱きつく星風テスの可愛さったら…!ダニーが骨抜きにされちゃうのも納得。

 

オーシャンズ11で特に素敵だなと思った曲は「愛した日々に偽りはない」だった。詐欺師のダニーがテスに向けて嘘偽りのない愛を吐露する姿に痺れる曲なのだが、フィナーレでは芹香斗亜さんがこの曲を歌われて思わず頭を抱えた。これがまかキキか〜〜〜!とシンメ好きのジャニヲタの血が騒いじゃったね。

SZ10THがお値段以上どころではない話

2021年3月3日、遂にSexyZoneから待望の10周年記念アルバム「SZ10TH」が発売された。

お値段以上どころではない、あまりに豪華すぎる内容に感情が溢れてしまったので、感想と共にダイマしていきたいと思いまーーーす!

まずは商品スペックからご説明。

 

【初回限定盤A】

SZ10TH (初回限定盤A)(2CD+Blu-ray)(BOX仕様)(特典:なし)

SZ10TH (初回限定盤A)(2CD+Blu-ray)(BOX仕様)(特典:なし)

  • アーティスト:Sexy Zone
  • 発売日: 2021/03/03
  • メディア: CD
 

2CDには新曲2曲を含む25曲、Blu-rayにはシングル全23曲のMV+新曲「RIGHT NEXT TO YOU」のMV+メイキング映像が収録されている。これでお値段たったの税込4,950円。価格破壊もいいところである。

ちなみにこの価格設定なのは、応援してくれている若い世代にも手に取ってもらえるようにという意図だそう。福利厚生が手厚いよSexyZone。

参考までに、嵐が10周年の時には「5×10All the BEST! CLIPS」と称してベストアルバムとは別にMV集が発売されたため、当時高校生だったわたしはヒイヒイ言いながら購入したのを覚えている。

"RIGHT NEXT TO YOU"のMV

全編英語詞のゴリゴリのダンスナンバー。世界よ、これがSexyZoneだ!と叫ばずにはいられない。

スタイリッシュなダンスシーンとアングラな世界観のリップシーンが合わさったMVがヲタクの癖にブッ刺さるとわたしの中で話題に。

 

【初回限定盤B】

SZ10TH (初回限定盤B)(2CD+DVD)(3方背スリーブケース仕様)(特典:なし)
 
  • 2CD+DVD
  • ロゴステッカー
  • 3方背スリーブケース仕様

CDは初回限定盤Aと同内容、DVDにはSexyZoneの5人が作詞した新曲「Change the world」のMVと、SexyZoneの伝家の宝刀であるバラエティ企画「高級焼肉をかけてV(部位)+V(部位)QUIZ」が収録されている。こちらもお値段税込4,950円。

"Change the world"のMV

このMVがまた涙なしには見られない…なんせデビューから今までの5人の映像で出来ている。単純に過去映像を繋ぎ合わせた訳じゃなく、2番のサビは歌詞と過去映像の口の動きまでピッタリ合っているのだから凄い。初めて観た時は鳥肌が立った。

昨年夏にレーベルを移籍したにも関わらず、このMVにはポニーキャニオン時代の映像も沢山詰まっている。というかほぼ「提供:ポニーキャニオン」である。それだけSexyZone愛へのがとっても深いのだ。

高級焼肉をかけてV(部位)+V(部位)QUIZ

簡単に企画内容を説明すると、SexyZoneのメンバーの身体の一部の写真を見て、誰かを当てる毎に高級焼肉が食べられるというシンプル企画。なのにゲラゲラ笑える映像になるのがSexyZone。

ちなみにSexyZoneは、くじを引いたりサイコロを転がしたりクイズに正解するだけで美味しいものが食べられる世界線に生きています。

 

【期間限定スペシャルプライス盤】

SZ10TH (期間限定スペシャルプライス盤)(3CD)(特典:なし)

SZ10TH (期間限定スペシャルプライス盤)(3CD)(特典:なし)

  • アーティスト:Sexy Zone
  • 発売日: 2021/03/03
  • メディア: CD
 
  • 3CD

初回限定盤A、Bと同じくシングル全23曲+新曲2曲収録。Disc3には、ファン投票で決定した歴代のカップリング15曲が収録されている。またこれが粒ぞろいの名曲ばかりなのでぜひとも聴いて欲しい。

ちなみに、スペシャルプライス盤が税込み3,300円で手に入るのは2021年6月30日まで!気になる方はお早めに!

 

 

そしてここからやっと特典の感想。ネタバレ注意。

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初回限定盤A:メイキングの感想と考察もどき

  • カメラマンさんから「顎上げセクシー系で!」と言われてくつくつ笑うのに、カメラが回った途端完璧にやってのけるのが松島聡。表情管理がピカイチなのよ。これで自分がセクシーだと自覚がないなんて…恐ろしい子
  • BON BON TONIGHTの時から思ってたけど、中島健人のスーパーラップタイムは最高なんだよな〜〜〜!このビジュアルで英語のラップ歌わせちゃろと思った人に表彰状をあげたい
  • ライネクMVの佐藤勝利を一言で表すなら「闇堕ちした小狼くん」
  • 「24歳だからね」と笑う勝利くん、冷蔵庫の中の蝶の標本倒してビックリする勝利くん、全部子どもの顔してて可愛い
  • 映像チェックに集中している時は殺し屋みたいな顔になのに、曲の確認しながら微笑んでる顔は赤ちゃんみたいな人、それが菊池風磨
  • 健人くんがいる浴室の壁にも、勝利くんが掛かるソファの横にあるネオンサインにも唇のイラストがある。ハイヒールや裸婦像と同じく女性性の象徴?
  • ライネクのアングラな世界観には、屏風や盆栽などの和、西洋画や彫刻などの洋、ネオンサインやチャイナシャツなどの中華と、和洋中のテイストが混ぜ合わされている。ポプステでも世界から見た日本「ネオTOKYO」をテーマにしていたけど、世界進出に向けそれと近いものをイメージして作っているのでは
  • あと調べたところ、蝶は中国では美しさの象徴と。勝利くんだけなぜ美術品じゃなくて蝶の標本の前にいるんだ?と思っていたらこういう意味もあるみたい
  • ダンスシーンの撮影では暑がり健人くんを確認。1人だけ手持ちの風機使ってるの可愛い
  • 手をパッパッとするところで口でもパッパッて言っちゃう聡ちゃん、そういえばFC動画でも振付は歌詞とか雰囲気で覚えていると話していた
  • ふまそう、さときくがペアだと絶妙な身長差が生まれるのが最高で〜〜〜す!(拍手)

あとこれはメイキングではなくMV本編の話だけど、ハイヒールぶん投げる中島健人くんが最高!癖!!

 

初回限定盤B:バラエティ企画VVQの感想

  • 控え室で1人だけみかんを食べてビタミンCを摂取する健人くん、田中みな実師匠なのか?あざとくてなーんにも悪くないよ!
  • 「故意に青選んだだろ!ふまけん狙って!」「しょりそう狙って!」と公式がカップリング名を使うことにヲタクは未だ慣れません
  • 「俺が愛強いのバレる、だる」と言う風磨くん、その言い方恋じゃん…流石は圧倒的彼氏じゃん…と思っていたら、クイズでバンバンどのメンバーか当てていくの本当に愛が強いじゃん…
  • セクチャン焼肉回で「ヤバスティックパイナポー」というパワーワードを産んだ中島健人、新たに「見てくれよこのレモンのシャワー!浴びろ!浴びろ!浴びろ!(突然始まる半沢ネタ)」「SZタンす」「Congratulations Forever」というパワーワードを連発。最年長、テンションが一番若いのよ
  • それに呼応して、「時すでにお寿司」「シュラスコ入りまーーす!」とトンチキワード連発し始める風磨くん。みんな大好きお馬鹿になるふまけんが久々にクランクインしました
  • LAまで行って木登りさせられた勝利くん、冷静に何???
  • やっとお肉が食べられた聡ちゃんに、サービスで白米が差し出されたシーン。「美味しいねぇ」と眉を下げて嬉しそうに頬張る聡ちゃんがとにかく可愛いの…たんとお食べ…
  • ちなみにわたしは「私のオキテ」検定一級なので、メンバーの誰よりも早くスカートから覗く内腿が誰のものか正解できました(変態)
  • 積極的に真似していきたいポーズ「路駐して空を見上げる菊池」「何故か号泣する中島健人

ちなみに今回のご褒美は、ホテルニューオータニ内のパティスリーSATSUKIさんのエクストラスーパーメロンショートケーキ(税別3,800円)。わたしはメロンNGなのでこれの食レポは一生上げられません、無念。

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スペシャルプライス版:まさかのギミック

Disc2最終トラックの「Change the world」の収録時間が、SexyZoneのデビュー日である11月16日に掛けて「11分16秒」になっている。

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嵐育ちなので、CDを取り込んだ時点では「おっ、今回シークレットトークでも入ってるのかな?」くらいに思っていたら、SexyZoneコールが鳴り響く中での5人の円陣の音声(デビュー当時のもの)→5人ver.のRUNという流れだった。

健人くんが「聞けば誰かの応援歌、歌えば自分の応援歌」と称するこのRUNは、レーベル移籍後の初シングルにして、聡ちゃんが復帰してから初めて5人揃って披露した曲でもある。5人にとってもファンにとっても思い入れのある大切な曲だが、CD音源としては聡ちゃん復帰前の4人ver.しか存在しなかった。

それがまさか、シークレットトラックという形で5人ver.が収録されているなんて!初めて聴いた時は電車の中だったのに、思わずツーっと涙が溢れたよね。

 

と、まぁこんな具合でヲタクを笑わせたり泣かせたりと忙しいSexyZoneの10周年記念アルバム「SZ10TH 」は大絶賛発売中!これを読んで気になったよと言う方がいらっしゃれば、是非お手に取っていただければ。絶対に後悔しないよ。